皆さんこんにちは。
今回は SR400FinalEditionのスイングアーム回りのメンテナンス について詳しく解説します。
スイングアームは、リアサスペンションの動きを支え、チェーンラインを安定させる非常に重要な部品です。
ここが劣化したり、グリス切れを起こしたまま放置すると、異音や直進安定性の低下、走行性能の悪化を招きます。
さらに、ピボットシャフトが固着した場合はスイングアームを切断して交換する大掛かりな修理が必要になることもあります。そのため、 定期的な点検・清掃・グリスアップ が欠かせません。
準備するもの
- トルクレンチ(~130Nmが測れるもの)
- ラチェットレンチ
- レンチ(8・10・12・14・17・22mm)
- ソケット(8・10・12・14・17・22mm)
- オープンスパナ(10・17mm)
- プラスドライバー(アクスルシャフトの回り止め用)
- 定規またはスケール(チェーンの張り調整時に使用)
- ゴムハンマーまたは樹脂ハンマー
- ベアリングプーラー(ベアリング交換の場合は必須)
- ベアリングレースシールドライバー(ベアリング交換の場合は必須)
- ウエスや段ボール(チェーンや部品の仮置き用)
- グローブ、ウエス(汚れ対策)
ケミカル類
- パーツクリーナー(清掃用)
- グリス(シャフトやカラーに塗布)
交換推奨部品
- チェーンスライダー:431-22151-03
- 樹脂カバー(ワッシャープレート):3HT-22156-10
- オイルシール×2:93108-35004
- スラストベアリング×2:93342-22205
- シム(ワッシャープレート)×2:90201-22284
- スラストカバー×2:2K8-22129-00
※2個必要な部品があるので、交換する場合は個数を注意して購入しましょう。
スイングアーム取り外し手順
車両を安定させる
- 平坦な場所でセンタースタンドを使用し、リアホイールを浮かせます。

- リアタイヤを外すため、重心ができるだけフロント寄りになるようにしましょう。
ガソリン満タン・ハンドルに重量物を掛けておく等
シートを外す
- シートもこのタイミングで外しておきます。シート固定のボルト(12mm)2か所

- 重心を前にして倒れにくいようにするためにも、グラブバーを外しやすくするためにも、先にシートを外しておくとよいです。

マフラーを外す

スイングアーム脱着のスペースを確保するために取り外します。
👉 [マフラーの脱着手順はこちら]
https://ezomemo-blog.com/sr400-muffler-install-remove/
リアホイールを外す

スイングアームをフリーにするために必要です。
👉[リアホイールの脱着手順はこちら]
https://ezomemo-blog.com/sr400-rear-wheel-installation-removal/
チェーンカバーを外す
- スイングアーム後方のステーボルト(10mm)を外す。

- その後、前部のボルト(10mm)も外します。こちらはクリアランスが少ないため、ラチェットメガネレンチがあれば楽。

- 前部はボルトだけでなく、ゴムブッシュとカラー、ワッシャーも付いているため、紛失しないよう注意。

- チェーンカバーを取り出す際は、フレーム等に当てて傷をつけないよう慎重に。
左右タンデムステップの取り外し
タンデムステップは外さなくても作業可能ですが、傷防止や作業性向上のため外しておきます。(無理して外さなくてもいいかもです)
- 右側:フランジナット(17mm)を外す(スペースが狭いためオープンスパナ使用したほうが良いです)


- 左側はステーごと取り外し。(14mm×2本)


グラブレールを外す
- グラブレールのウインカー横のボルト(12mm)を左右両方外す。

- 前側の袋ナット(17mm)はリアショックと共締め、こちらも外しておきます。

- グラブバーを外す際は少し窮屈なため、左右を広げながら後ろに引くと安全に取り外せます。

- グラブバーを外したら、フォーク側にあるワッシャーも忘れずに入れて取り外しておくこと。

※リアショックはスイングアームを支えているため、まだ外しません。
また、リアショックを固定している袋ナットとワッシャーは、上下違いがあるため、上下左右同じ場所に戻せるように保管しておきましょう。
スイングアームピボットを外す準備(固着確認)
- リアショック下側の袋ナット(17mm)を緩める。※緩めるだけ。

- シャフトのグリスニップルカバーボルト(8mm)を左右とも外す

- 右側のセルフロックナット(22mm)を外す。供回りしないよう左のナットも固定しながら外します。ワッシャーがあるのでなくさないよう注意。


- 供回りしないように工夫しました。正しいやり方ではないですが、参考程度に。

- シャフトが引き抜けるかを確認する。固着している場合は、ナットを仮締めしてゴムハンマーで軽く叩き、シャフトを動かします。動く状態を確認出来たら、一度そのままにします。

- 無理に叩くとシャフトにダメージがあるため注意
※もし、シャフトが全く抜けないようなら、無理に叩いて抜こうとしないように。シャフトの曲がりや変形で抜けないこともあります。最悪スイングアームごと切断ということにもなります。無理せず専門業者に相談しましょう。
スイングアームを取り外す
- 片側のリアショックを外す。ナットとワッシャーは上下で違うので元に戻せるように保管しておきます。


- ピボットシャフトを引き抜く

- もう片側のリアショックを外す

- スイングアームを取り外す

この順番で取り外すと作業がしやすいです。取り外した後、チェーンスライダーを落として無くさないよう注意してください。
これでスイングアームの取り外しは完了。

ブレーキペダルシャフトのピボット部の分解

スイングアームを外さないとメンテナンスができないのが、ブレーキペダルシャフトのピボット部です。スイングアームを外したこの機会に、こちらもメンテナンスしておくと安心です。
ここは水や泥が侵入しやすく錆びやすい場所なので、放置すると削れや変形の原因になり、最悪交換が困難になることもあります。
👉 [ブレーキペダルシャフトの脱着・メンテナンス手順はこちら]
https://ezomemo-blog.com/sr400-brake-pedal-pivot-shaft/
スイングアームのOH(オーバーホール)手順
スイングアームの分解
スイングアームを分解する際は、まず作業前に本体を軽くクリーニングしておくと汚れの混入を防げます。
左はシムが右は外側に樹脂カバーがあります。基本的な作業は左右同じです。
- 左:チェーンスライダー
右:樹脂カバー を外す
- ブレーキトルクロッドを外す


- カバーの取り外し
- スイングアームの外側カバーを外します。左側には調整用のシート状シムが入っているので、紛失しないよう取り出して保管してください。

- スイングアームの外側カバーを外します。左側には調整用のシート状シムが入っているので、紛失しないよう取り出して保管してください。
- スラストベアリングの取り外し
- セットされているスラストベアリングを抜き取ります。劣化があれば新品交換を検討します。(グリスでカバーの内側にくっついていることが多いです。)


- セットされているスラストベアリングを抜き取ります。劣化があれば新品交換を検討します。(グリスでカバーの内側にくっついていることが多いです。)
- オイルシールの取り外し
- オイルシールを外します。ゴムの劣化や亀裂がある場合は要交換です。ゴム部品なので基本は交換です。
※向きがあるので、取り外す際は形状の向きを覚えておきましょう。
- オイルシールを外します。ゴムの劣化や亀裂がある場合は要交換です。ゴム部品なので基本は交換です。
- ピボットシャフト内カラーの取り外し
- ピボットシャフト内部のカラーを引き抜きます。断面に段付き摩耗が見られる場合は必ず新品に交換してください。

- ピボットシャフト内部のカラーを引き抜きます。断面に段付き摩耗が見られる場合は必ず新品に交換してください。
- ニードルローラーベアリングの点検
ニードルローラーベアリングを取り外すには専用工具が必要で、難易度が高いため取り外さない方が安全です。ベアリングの動きがスムーズな場合は、洗浄とググリスアップのみ行います。
左右とも分解すれば、スイングアームは全バラ状態になります。なお、シムは調整用であり、枚数は車両ごとに異なります。基本的には左側のみに入っている点を覚えておくと良いでしょう。

クリーニングと点検
スイングアームを分解した後は、組み付け前に徹底したクリーニングと点検を行うことが重要です。砂やゴミが残ったままでは、ベアリングやカラー、ピボットシャフトの寿命を大きく縮めてしまうため、時間をかけて丁寧に作業しましょう。
- フレーム側ピボット部の洗浄
ピボット穴の内部、ナットが接触する面、そしてスイングアームが当たる接触面を入念にクリーニングします。微細な砂粒でも摩耗やガタつきの原因となるため、確実に除去してください。
- スイングアーム側ピボット部の洗浄
フレーム側と同様に、砂やゴミが残っているとカラーやベアリングを傷めるため、ブラシやウエスを使って入念に清掃します。 - ピボットシャフトの洗浄
表面の汚れをしっかり落とすだけでなく、グリス穴内部に詰まった古いグリスや異物も完全に除去します。左右両側から貫通させてクリーニングすると効果的です。 - スイングアーム本体・取り外したパーツの洗浄
本体やカラー、シム、ベアリング類などすべてのパーツをパーツクリーナーやブラシで洗浄し、古いグリスや汚れを取り除きます。 - ベアリングの点検
ニードルベアリングのローラーがスムーズに回るか確認してください。動きに引っ掛かりがある場合や、傷・変形が見られる場合は新品交換が必要です。 - シール・カラー・スライダーの確認
- ダストシールは基本的に新品に交換するのが安心です。
- ピボットシャフトカラーの表面に段付き摩耗がある場合も新品交換を推奨します。
- チェーンスライダーは摩耗や割れがあればこのタイミングで交換しましょう。
- ダストシールは基本的に新品に交換するのが安心です。
スイングアームの組付け
スイングアームのオーバーホールやメンテナンス作業の最後に行うのが組付けです。ここを正しく行わなければ、せっかくの整備が無駄になるばかりか、走行性能の低下や安全性の問題につながります。焦らず、順序通りに進めることが重要です。また、部品の向きを間違えて取り付けないよう細心の注意を払いましょう。
- グリスアップ
洗浄後は、すべてのパーツに新しいグリスを塗布してから組付けを開始します。- ニードルベアリング … ローラーの隙間に刷り込むようにしっかり塗布します。

- スラストベアリング … 摺動面を中心に全体へ薄く均等に塗ります。

- オイルシール … 全体的に塗布し、ゴムの保護と気密性を確保します。

- ダストカバー … 接触部分に軽く塗布しておくと組付けがスムーズです。

- 調整用のシム…薄く塗っておく程度でよいと思います。

- カラー…表面にまんべんなく塗布します。

- ピボットシャフト … 表面全体にグリスを塗布し、さらにニップルから内部へもグリスを注入して防水・防塵性を高めます。

- チェーンスライダー … 内側に薄く塗布してチェーンとの摩擦を低減させます。

- ニードルベアリング … ローラーの隙間に刷り込むようにしっかり塗布します。
- ニードルベアリングの組付け
外した場合は、左右のニードルベアリングをスイングアームに圧入します。- ベアリングプッシャーを使用し、真っ直ぐ押し込むように取り付けます。
- 入りにくい場合は、ヒートガンでスイングアーム側を軽く温めるとスムーズに圧入できます。
- カラー・シール類の取り付け
- カラー … 挿入後に軽く回してグリスをなじませます。

- オイルシール … 向きがあるので、誤って逆に入れないよう注意します。

- シム(左側チェーン側のみ) … チェーン側に入っていたシムを乗せておきます

- スラストベアリング … グリスを馴染ませながら取り付けます。

- ダストカバー…最後にダストカバーをかぶせます

- カラー … 挿入後に軽く回してグリスをなじませます。
取り付けの際は、シールやカバーを曲げたり傷つけたりしないよう慎重に作業してください。
これでスイングアームのOH(オーバーホール)は完了です。
SR400スイングアームを車体に組付け
スイングアームをフレームに取付け
- ピボットシャフトを差し込む前に、ピボット穴内部にグリスを塗布

- ブレーキトルクロッドを狩り固定。取付け角度が決まらないため、狩り固定。適度に動くくらいに固定しておきます。

- グリスアップしたピボットシャフトを差し込めるよう準備しておく

- チェーンスライダーを忘れずにセットしておく。(これを忘れるとやり直しになるので注意。…私は忘れてやり直しました笑)

- スイングアームをセットし、チェーンを左側のスイングアームに通す。

- ピボットシャフトをゴムハンマーなどで軽く叩きながら挿入
フレームとスイングアームの間の段差に引っかかっている場合があります、強く叩きすぎない。スイングアームを微調整しながら挿入する。
- スイングアーム先端は膝で支えると安定して作業可能
- 左右のシャフトの出具合を揃えておく
リアショックの仮付け
- リアショックの上下ピボットシャフトにグリスを塗布しておく。

- ワッシャーをセット。リアサスペンションの内側のワッシャーは上下左右同じサイズです。


- 左右両方のリアショックを差し込む

- 外側のワッシャーをセットしておく×4。※こちらは上下でワッシャーの厚みが違うので注意。 上:薄い 下:厚い


- ナットは仮締め状態でセット×4。上のナットはグラブバーが入るため、隙間が空いている程度でよい。
上下の袋ナットもサイズが違うので間違えないように。
上:深いナット 下:浅いナット

ピボットシャフトの固定
- スイングアームピボットシャフトワッシャーとナットを左右両方取付け。
この時に、できるだけシャフトのネジ山が均等に出るように調整します。ナットからネジ山が1.7㎜以上が規定値。左右ともに2山程度でおおよそ均等になりました。
※私は片方に偏ったため、ニップル部のカバーボルトを仮締めして、そちらで固定しながら調整しました。力を入れすぎるとネジ山を壊す可能性があるため注意しながら作業しましょう。
- ナットが均等に調整出来たら、規定トルクで締める。規定トルク:105Nm
※リアタイヤが付いていないため、締め込み時は後ろに車体が倒れないよう注意
- ニップル部のカバーボルトを規定トルクで締め込む。規定トルク:10Nm

グラブバーを取付け、リアショックを固定
- グラブバーを仮付します。先端を差し込み、後部のボルトも仮で取付けしておく
- 仮組みの段階で向きや向きを必ず確認し、規定トルクで固定。


- 規定トルク
リアショックの袋ナット:上下30Nm
グラブバー後部のボルト:16Nm
- 規定トルク
注意:リアショックを必要以上に締め込むとブッシュを痛める可能性があります
これでスイングアームの固定は完了です。
リア周りを元通りに組みなおす
タンデムステップの取付け
- 左右のタンデムステップをステーごと装着。

- 締め付けトルク:
右30Nm
左32Nm×2本
- 締め付けトルク:
チェーンカバーの取付け
- チェーンカバーを元の位置にセットし、前後のボルトを仮固定する
- 前部はゴムブッシュ・ブッシュを忘れずに。前後ともに、規定トルクで取付け。
規定トルク:前後7Nm

リアホイールの取り付け
詳細は別記事で解説しています。それぞれのボルトの規定トルク等参考にしてください。

👉 [リアホイールの脱着手順はこちら]
https://ezomemo-blog.com/sr400-rear-wheel-installation-removal/
トルクロッド本固定
- リアホイールの取付けができたら、トルクロッドの位置が決まるので、スイングアーム側を規定トルクで本固定する。規定トルク:19Nm

シートを取り付ける
- シートを取り付ける。シート下のボルト2本 規定トルク:16Nm

マフラーの取り付け
詳細は別記事で解説しています。それぞれのボルトの規定トルク等参考にしてください。

👉 [マフラーの脱着手順はこちら]
https://ezomemo-blog.com/sr400-muffler-install-remove/
チェーン調整やブレーキの遊び調整等を忘れずに行ってください。
それぞれのボルトを規定トルクで締め付けたら、完了です。
最終チェック
- ピボットシャフト・リアショック等の締め忘れ確認
- チェーンの遊び・ホイール回転チェック
- ブレーキ作動確認
- マフラー・ステップの固定確認
- 試走して異音やガタつきがないかを必ず確認
まとめ
スイングアーム回りは SR400の走行性能や安全性を支える非常に重要な部分 です。
正しい順序・規定トルク管理・適切なグリスアップを守ることで、スムーズな動きと長期的な耐久性を確保できます。
特に、グリスは適切に充填することで、次回のメンテナンスまでの寿命が大幅に伸びる のでおすすめです。
ぜひ皆さんも、定期的に点検・メンテナンスを行い、大切なSR400を長く楽しんでください。