【SR400】デコンプワイヤーの交換作業手順を解説
皆さんこんにちは。
今回は SR400ファイナルエディションのデコンプワイヤー交換作業手順について解説していきます。
SR400の特徴でもあるキックスタートに欠かせないのが、デコンプレッション機構です。その操作を担っているのが、ハンドル左側にあるデコンプレバーとデコンプワイヤー。SR400ならではの装備と言えるでしょう。
デコンプワイヤーはクラッチワイヤーやスロットルワイヤーに比べて使用頻度が少ないため、ついメンテナンスがおろそかになりがちです。気付かないうちにワイヤー内部へサビが発生したり、動きが渋くなったり、被覆が劣化しているケースも少なくありません。
そこで今回は、デコンプワイヤーの交換手順を実際の写真とともに分かりやすく解説していきます。SR400のメンテナンスを行う際の参考になれば幸いです。
作業は自己責任となります。整備に不安がある方やDIY初心者の方は、無理をせずショップへ依頼することをおすすめします。
また、デコンプワイヤーの注油メンテナンスについては別記事で解説しています。ワイヤーの動きが少し渋い程度であれば、交換せずに注油だけで改善する場合もありますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
デコンプワイヤー交換前に知っておきたいこと

デコンプワイヤーは、使用しているうちに内部のワイヤーが伸びたり、ほつれたりすることがあります。定期的に状態を確認し、
- ワイヤーの動きが渋い
- ほつれや損傷がある
- 遊び量を調整しても適正値にできない
といった場合は、交換を検討しましょう。
また、デコンプワイヤーを交換する際には、ワイヤーの遊び量を適正に調整する作業が必要です。SR400では、遊び量を正しく調整するためにエンジンを圧縮上死点に合わせる必要があり、その際にクランクケースカバーを取り外します。
クランクケースカバーを取り外す際は、ガスケットの状態を確認できないため、作業前に新品のガスケットを用意しておくことをおすすめします。ガスケットの状態によってはオイル漏れの原因となるため、再使用する場合でも新品を準備しておくと安心です。
なお、デコンプワイヤーの交換後は、ワイヤーの取り回しや遊び量を確認し、ハンドルを左右に切った際にもワイヤーが突っ張らないことを確認してください。調整が不適切なまま使用すると、デコンプ機構が正常に作動しない可能性があります。
そのため、デコンプワイヤー交換は単純に古いワイヤーを新品へ交換するだけではなく、交換後の遊び量調整まで含めて行う作業と考えておきましょう。
準備する工具・用品
工具・用品類
- トルクレンチ
- レンチ(10・19mm)
スパナ(8mm)
※8mmスパナは2本あるとよい。アジャスターの供回り防止に使用。モンキーレンチでも代用可
- 六角ソケット(5mm)(トルク管理のため必要)

- 六角レンチ(5mm)

- プラグレンチ・プラグソケット(車載工具でも使用できますが、トルクレンチで締付トルクを管理できるプラグソケットがおすすめです)

- 金尺やスケール(遊び量の測定に使用)

- ワイヤーインジェクター

- コンプレッサーとエアガン


- ゴムハンマー(クランクケースカバーが固着していた際ににあると便利)

- 樹脂・木製製のヘラ等(クランクケースのガスケットが固着している場合にあると便利)

- グローブ

- ウエス(汚れ対策)
ケミカル類
関連部品
- デコンプワイヤーケーブル(2H6-26331-10)
楽天 Yahoo - デコンプブラケット(583-12283-00)
楽天 Yahoo - ブラケットのヘキサゴンボルト(91314-06025)
楽天 Yahoo - 左クランクケースカバーガスケット(3GW-15451-00)
楽天 Yahoo - 左クランクケースカバーボルト長(91314-06035)
楽天 Yahoo - 左クランクケースカバーボルト短(91314-06025)
楽天 Yahoo - 左クランクケースカバー(3GW-15411-00)
Amazon 楽天 Yahoo - 左クランクケースカバーダンパー(3HT-15326-00)
楽天 Yahoo
SR400デコンプワイヤーケーブルの取り外し作業手順
①センタースタンドで車体を安定させる
- 平坦で安定した場所に車体を設置し、センタースタンドを使用して車体を安定させる

②シリンダーヘッド側のデコンプワイヤーを取り外す
- ヘキサゴンボルト(5㎜)を外して、デコンプブラケットを取り外す


- デコンプカムからケーブルのエンド、タイコ部分を取り外す
カムのエッジでワイヤーを傷めないよう注意

③レバー側のデコンプワイヤーを取り外す
- レバーホルダーからケーブル(アウターチューブ)を引き抜いて取り外す
ケーブルのテンションだけなので引き抜けばOK

- デコンプレバーから、ワイヤーのタイコ部分を溝に合わせてスライドさせるようにして取り外す


④車体からデコンプワイヤーを取り外す
- 元通りに車体に戻せるよう、作業前に取り回しの写真を撮って記録しておくと安心。



- エンジン側のデコンプワイヤー先端を、傷つき防止のため養生テープ等で保護し、車体上側へ引き抜いてデコンプワイヤーを取り外す。


これでSR400デコンプワイヤーケーブルの取り外しは完了です。
SR400新しいデコンプワイヤーケーブルのグリスアップ

新品のデコンプワイヤーでも、内部に十分な潤滑剤が塗布されていない場合があります。
ワイヤー内部の潤滑状態は操作感に影響するだけでなく、ワイヤー自体の寿命にも関わる重要なポイントです。
取り付け前にワイヤーインジェクターを使用し、ワイヤールブを十分に注油しておきましょう。
①ワイヤーインジェクターを取り付ける
- ワイヤーケーブルの先端にワイヤーインジェクターを取り付ける
漏れがないようしっかり固定する。 - デコンプワイヤーは、エンジン側(金具側)に取り付けると漏れにくく、作業しやすいです。



②ワイヤーケーブルの両端をウエス等を使って保護する
- 汚れや油が飛び出るので、必ず両端をウエスで保護しておくこと

③ワイヤールブを注入する
- ワイヤールブを注入します
反対側からグリスが出てくるまで注入してください


- 反対側からグリスが出てきたら、ワイヤーインジェクターとウエスを取り外します

- ワイヤーを数回ストロークさせてグリスを内部でなじませる

これでワイヤーケーブルのグリスアップは完了です。車体に取り付けていきましょう。
SR400デコンプワイヤーケーブルの取り付け作業手順
①デコンプワイヤーを車体に通す
- 傷つき防止のため、デコンプワイヤーの先端を養生テープなどで保護しておく

- 事前に撮影しておいた写真を参考にしながら、デコンプワイヤーを元通りの取り回しで車体へ通す

※ワイヤーの上下を間違えないよう注意しましょう。ブラケットにセットする金具が付いている側がエンジン側です。
- 車体へ通した後、養生テープは外しておく

②タイコ部周りのグリスアップ
- デコンプワイヤー両端のタイコ部にグリスを塗布しておく


- デコンプレバーの溝やタイコのはまる穴にグリスを塗布しておく
さらに、レバーの可動部の内側へ薄くグリスを塗っておくことで、動きが滑らかになり摩耗防止にもつながります。

- エンジン側のデコンプカムの溝部にもグリスを塗布しておく

③レバー側のデコンプワイヤーを取り付ける
- デコンプレバーの溝にワイヤーを添わせながらタイコ部を取り付ける
※ワイヤーをタイコに収める際は、巻き方向(締まる方向)に軽くひねりながら取り付けます。逆方向にひねると、ほつれや断線の原因になります。
- デコンプレバーホルダーにケーブルをしっかり差し込む
反対側の取り付け作業をしやすくするためにも、奥まで確実に押し込んでおきましょう。
④エンジン側のデコンプワイヤーを取り付ける
- カムの溝にワイヤーを通し、タイコ部分をセットする。
エッジにワイヤーが擦れないように注意。

- デコンプワイヤーブラケットをセットして、ヘキサゴンボルト(5mm)を規定トルクで締め付ける
規定トルク:10Nm
※ワイヤーに隙間がなくブラケットが入らない場合は、レバー側のアウターケーブルがホルダーに奥まで差し込まれているか確認


⑤デコンプレバーの遊び調整を行う
デコンプレバーの遊びは、圧縮上死点・ハンドル左切り状態で調整します。作業前にクランクケースカバーのガスケットを用意してください。
※以下は簡略手順です。詳しい手順は別記事を参考にしてください。↓
事前準備
- センタースタンドを立て、ハンドルを左にめいっぱい切る。


①クランクケースカバーを外す
- 六角5mmでボルト5本を外し、カバーとガスケットを取り外す。


- 合わせ面を樹脂製・木製スクレーパーなどで清掃する。
- ガスケットが破損した場合は新品に交換する。

②スパークプラグを外す
- プラグキャップとスパークプラグを取り外す。


③圧縮上死点に合わせる
- プラグ穴を塞ぎ、19mmレンチでフライホイールを反時計回りに回す。


- 空気が押し出されたら、T1マークと合いマークを合わせる。

④遊び量を測定・調整する
- レバー先端の遊びを測定する。規定値:5.0~10.0mm

- 規定値外の場合は、8mmスパナでロックナットを緩め、アジャスティングナットで調整する。


- 調整後、ロックナットを締めて遊び量を再確認する。
⑤クランクケースカバー・スパークプラグを戻す
- 合わせ面を清掃し、ガスケットにエンジンオイルを薄く塗布して取り付ける。


- カバーボルト5本を10N・mで締め付ける。

- スパークプラグを25N・mで締め付け、プラグキャップを取り付ける。


⑥最終確認

取り付け作業後は、以下の項目を確認しましょう。
- ワイヤーの取り回しは元通りになっているか
- 左右にハンドルを切ってもワイヤーが突っ張らないか
- ブラケットは正しく取り付けられているか
- アジャスターとロックナットは確実に締まっているか
- デコンプレバーの遊び量が規定値(5.0~10.0mm)に収まっている
- デコンプレバーの操作がスムーズで、レバーが確実に戻る
- クランクケースカバーのヘキサゴンボルトが規定トルク(10N・m)で締め付けられている
- スパークプラグが規定トルク(25N・m)で締め付けられ、プラグキャップが確実に取り付けられている
- エンジン始動後、クランクケース周辺からオイル漏れがない
- エンジンが正常に始動し、デコンプレバーが正常に作動する
以上を確認したら、エンジンを始動し、異音や違和感がないか確認します。
問題がなければ、SR400デコンプワイヤー交換作業は完了です。
規定トルクまとめ
- ワイヤーブラケットのヘキサゴンボルト:10Nm
まとめ

ということで今回は、SR400デコンプワイヤーケーブルの交換作業手順を解説してきました。
デコンプワイヤーの交換作業自体はそれほど難しくありませんが、交換後には圧縮上死点に合わせた遊び調整が必要となるため、クランクケースカバーを開けて作業を行う必要があります。そのため、ワイヤー交換の中ではやや難易度の高い部類に入る整備と言えるでしょう。
整備に不慣れな方や作業に不安がある方は、無理をせずショップへ依頼することをおすすめします。
デコンプワイヤーは使用頻度が少ないため、点検やメンテナンスがおろそかになりがちな部品です。しかし、劣化や動作不良を放置すると、SR400特有のキックスタートにも影響を与えます。定期的に状態を確認し、必要に応じてメンテナンスや交換を行いましょう。
それでは、良きSRライフを。
関連部品
- デコンプワイヤーケーブル(2H6-26331-10)
- デコンプブラケット(583-12283-00)
- ブラケットのヘキサゴンボルト(91314-06025)
- 左クランクケースカバーガスケット(3GW-15451-00)
- 左クランクケースカバーボルト長(91314-06035)
- 左クランクケースカバーボルト短(91314-06025)
- 左クランクケースカバー(3GW-15411-00)
- 左クランクケースカバーダンパー(3HT-15326-00)




