第4回(前編)はこちら↓

SR400ステップダンパー自作計画 第4回(前編)|KE-1600の性能を検証してみる 第3回はこちら↓ https://ezomemo-blog.com/sr400-diy-step-damper-project3...

SR400ステップダンパー自作計画 第4回(後編)

SR400の振動を少しでも軽減できないか――。

そんな疑問から始まった、純正ステップダンパーの自作計画。

前回は、候補材料である信越シリコーン「KE-1600」を使ってテストピースを製作し、前硬化状態での硬度や弾力、耐久性、圧縮による変化などを検証しました。

その結果、前硬化状態の硬度は約52A

純正ステップダンパーの約61Aより柔らかいものの、引っ張りやねじりに対する強度も高く、自作ダンパーの材料として十分可能性を感じる結果となりました。

そして今回は、いよいよ後硬化実験です。

KE-1600はカタログ上、150℃で30分間後硬化することで、硬度が約70Aになるとされています。

本当にカタログ通りの硬度になるのか。

さらに、後硬化によって寸法・弾力・切削性・耐久性などにどのような変化が起こるのか。

実際にテストしてみます。

これまでの開発経過

現在までの開発状況は以下のとおりです。

第1回

  • ステップダンパー自作計画スタート

第2回

  • 純正ダンパーの硬度・寸法・重量測定
  • シリコン材料の調査・選定

第3回

  • ステップ取付部の寸法測定・構造分析

第4回

  • KE-1600の検証(前硬化)
  • KE-1600の検証(後硬化)

後硬化用のオーブンを用意

ついに後硬化用のオーブンを購入しました。

今回はオーブン本体だけでなく、庫内の実際の温度を確認するためにオーブン温度計も用意しています。

設定温度を150℃にして、庫内に入れた温度計も150℃付近で安定していることを確認。

これでようやく後硬化実験を始められます。

今回は事前にもう1セットKE-1600のテストピースを製作しておきました。

さらに、後硬化時の状態によって違いが出るのか確認するため、

  • カップから脱型してから後硬化するもの
  • カップに入れたまま後硬化するもの

の2種類を用意しました。

後硬化前の状態は以下のとおりです。

状態硬度厚み
カップあり51.5A測定不可
カップなし表51.0A/裏53.0A12.2mm

それでは、この2つを150℃で加熱してみます。

150℃で30分間後硬化してみる

オーブンを150℃まで温め、温度計でも庫内が150℃付近になっていることを確認してからテストピースを入れます。

後硬化時間は30分間

カタログ上では、この条件で硬度約70Aとなっています。

30分後、テストピースをオーブンから取り出しました。

当然ですが、取り出した直後はかなり高温です。

この状態では安全に触ることができず、温度によって硬度測定にも影響が出る可能性があるため、まずは常温まで冷えるのを待ちます。

カップに入れたまま後硬化すると脱型が大変だった

まず気になったのが、カップに入れたまま後硬化したテストピースです。

前硬化状態では、カップとの隙間にエアーを吹き込むだけで簡単に脱型できました。

ところが、後硬化後はまったく様子が違います。

エアーブローだけでは最後まで外すことができず、最終的には金属製のヘラを使って慎重にこじりながら脱型することになりました。

後硬化による寸法変化によってカップとの密着が強くなったのか、表面が固着したのか、今回の実験だけでは明確な原因までは分かりません。

ただし、

「型に入れたまま後硬化する場合、離型対策はかなり重要」

ということは分かりました。

実際のステップダンパー用の型では形状もさらに複雑になるため、離型剤や型構造については改めて検討する必要がありそうです。

後硬化後の硬度を測定

テストピースが常温まで冷えたところで、硬度を測定します。

まず最初の測定結果はこちら。

状態硬度
カップあり71.0A
カップなし・表70.5A
カップなし・裏70.0A

なんと、ほぼカタログ値通りの約70Aになりました。

さらにカップに入れて後硬化したテストピースも脱型し、改めて2つのテストピースの表裏を測定しました。

テストピース
カップあり70.5A70.5A
カップなし71.0A70.5A

4か所の平均値は70.625A

※70.5+70.5+71.0+70.5=282.5なので、平均は約70.6Aとなります。

カタログ値は約70Aなので、今回の実験ではほぼカタログ通りの硬度まで上昇したという結果になりました。

前硬化状態では約52Aだったため、150℃・30分の後硬化によって明確に硬度が上昇しています。

これはかなり分かりやすい結果ですね。

後硬化すると寸法がわずかに大きくなった

続いて寸法を確認します。

カップから脱型した状態で後硬化したテストピースは、

12.2mm → 12.3mm

となりました。

わずかではありますが、約0.1mm厚くなっています。

個人的には加熱すると収縮するのではないかと予想していたので、これは意外な結果でした。

また、カップに入れたまま後硬化したテストピースは、脱型後に約12.9mmあり、表面が少し膨らんだような形状になっていました。

ただし、こちらは後硬化前の厚みを正確に測定できていないため、単純な前後比較はできません。

今回の結果だけでは、KE-1600そのものが後硬化によって膨張したのか、内部の気泡や型による拘束などが影響したのかまでは判断できません。

それでも、脱型した状態で後硬化したテストピースでも約0.1mmの変化が確認できたため、実際に型を設計する際には後硬化後の寸法変化も考慮する必要がありそうです。

見た目や表面に大きな変化はなし

後硬化後の表面や外観についても確認しました。

こちらは意外にも、大きな変化はありません

150℃で30分加熱していますが、変色や表面の荒れ、ベタつきなどは見られませんでした。

触ったときの表面の質感についても、前硬化状態と大きな違いは感じません。

見た目だけでは、前硬化と後硬化を判断するのは難しいくらいです。

臭い・切削性・気泡も確認

臭いについては、前硬化状態とほとんど変わりませんでした。

150℃で加熱したからといって、特に強い臭いが残ることもありません

続いて切削性です。

前硬化状態では、約11mm厚のテストピースをカッターで切断する際に2回ほど刃を入れる必要がありました。

ところが今回の後硬化後のテストピースは、一度で切断することができました。

ただし、これは力の入れ方や切断位置などによっても変わるため、

「後硬化によって切削性が良くなった可能性がある」

程度の結果として考えておきます。

内部の気泡についても確認しました。

後硬化したからといって、新たに大量の気泡が発生したような状態ではありません。

ただ、今回の後硬化用テストピースの方が、前回製作したものより少し気泡が多いようにも見えました。

これは注型時の気泡量が違った可能性もあるため、後硬化そのものが原因とは断定できません。

一方で、加熱によって内部の気泡が膨張し、寸法変化に影響した可能性も考えられます。

この点については、今後さらに条件をそろえて検証したいところです。

弾力は明らかに硬くなった

一方で、触ったときの弾力には明確な違いがありました。

指で押してみると、前硬化状態よりも沈み込みが少なくなっています。

手で曲げた場合も、後硬化したテストピースの方が明らかに力が必要で、曲がる量も少なくなりました。

硬度が約52Aから約70Aまで上昇しているので、当然といえば当然ですが、実際に手で触っても違いが分かるレベルです。

ここで個人的に気になったのが、

「ステップダンパーとしては少し硬すぎるのでは?」

という点です。

純正ダンパーの実測値は約61A。

前硬化KE-1600は約52A、後硬化では約70Aです。

硬度だけを比較すると、純正はちょうどその中間に位置しています。

振動を吸収する部品として考えた場合、単純に硬ければ良いわけではありません。

現時点での感触では、柔軟性については前硬化状態の方がダンパーとして面白そうに感じます。

ただし、実際の振動吸収性能については、最終的にダンパー形状へ成形して実車で比較しなければ判断できません。

後硬化後も強度は十分

最後に耐久性を確認します。

前回と同じように、テストピースを手で強く引っ張ったり曲げたりしてみました。

結果としては、前硬化状態と同様に非常に丈夫です。

力いっぱい引っ張っても、ひび割れや裂けは発生しません。

むしろ硬度が上がったことで、曲げたり引っ張ったりするこちらの手が痛くなるほどでした(笑)。

少なくとも今回の簡易的な試験では、後硬化によって脆くなったような印象はありませんでした。

後硬化したKE-1600でも圧縮実験

続いて、第4回で行った圧縮実験を後硬化後のテストピースでも行ってみます。

純正ステップダンパーは、取り付け時にフランジ部分が約3mmから1.5mmまで圧縮されています。

そのため今回も、厚み12.3mmのテストピースを約半分の6mm程度まで圧縮する予定でした。

……が、ここで問題発生。

前回と同じブレーキキャリパー用のピストンツールで圧縮してみましたが、後硬化したKE-1600が硬すぎて、それ以上締め込むことができません。

前硬化状態との硬さの違いを、こんなところでも実感することになりました。

今回は無理に6mmまで圧縮せず、可能な範囲で締め付けて実験を行います。

圧縮時の厚みは、おおよそ7~9mm程度となりました。

その状態で1週間固定し、圧縮を解除した後の厚みと硬度を毎日測定します。

1週間の圧縮結果

測定結果はこちらです。

経過時間厚み硬度
初日12.3mm70.75A
1日12.1mm70.0A
2日12.0mm69.75A
3日12.0mm69.5A
4日12.0mm69.5A
5日12.0mm70.0A
6日11.95mm70.0A
1週間11.95mm69.5A

結果として、最初の2日ほどで厚みが約0.3mm減少。

その後はほとんど変化せず、1週間後には11.95mmとなりました。

前硬化状態では11.8mmから10.8mmまで約1mm変化したため、単純に比較すると後硬化したテストピースの方が変形量はかなり少なくなっています。

ただし、今回は材料が硬すぎて前回と同じ圧縮率まで締め込むことができませんでした。

そのため、

「後硬化すると圧縮永久ひずみが小さくなる」

と今回の結果だけで判断することはできません。

圧縮条件が異なるため、あくまで参考値として考えます。

硬度については、圧縮前後を通して約69.5~70.75A。

1週間圧縮しても大きな変化はありませんでした。

圧縮を解除すると厚みは戻る?

さらに今回は、1週間の圧縮試験終了後も測定を続けました。

圧縮を解除した直後の厚みは11.95mm。

その後、どの程度元の寸法へ戻るのかを確認します。

経過時間厚み
圧縮終了時11.95mm
1日後12.1mm
2日後12.1mm
3日後12.1mm
4日後12.1mm
5日後12.1mm

1日後には12.1mmまで回復しました。

しかし、その後は5日目まで12.1mmのまま変化しませんでした。

元の厚みは12.3mmだったため、今回の実験では最終的に約0.2mmの変形が残ったことになります。

ただし、こちらも圧縮荷重や試験方法を厳密に管理した試験ではないため、KE-1600の正式な圧縮永久ひずみを示す数値ではありません。

あくまで今回製作したテストピースを使った簡易実験の結果として捉えてください。

前硬化と後硬化を比較

ここまでの結果を簡単に比較してみます。

項目前硬化後硬化
硬度約52A約70.6A
純正との比較約9A柔らかい約10A硬い
弾力柔らかめ明らかに硬い
引張・曲げ十分強い十分強い
表面状態良好大きな変化なし
圧縮後の硬度変化ほぼなしほぼなし

こうして比較すると、後硬化による最大の変化はやはり硬度です。

150℃で30分加熱しただけで、約52Aから約70Aまで大きく上昇しました。

一方、外観や表面状態、簡易的な引張強度などには大きな変化を感じませんでした。

個人的に一番悩ましいのは、やはりステップダンパーとしての硬さです。

純正:約61A
前硬化:約52A
後硬化:約70A

見事なくらい純正が真ん中にあります(笑)。

この結果を見ると、

「前硬化と後硬化の中間くらいの硬度にできれば理想的なのでは?」

とも考えたくなります。

ただ、ダンパーとして重要なのは硬度だけではありません。

実際に取り付けた際の変形量や耐久性、そして何よりSR400から伝わる振動がどの程度変化するのか。

ここからは、材料単体の数字だけでは判断できない領域に入っていきそうです。

今回分かったこと

今回の後硬化実験で分かったことをまとめます。

  • 150℃・30分の後硬化で硬度は約70.6Aになった
  • カタログ値約70Aとほぼ一致した
  • 前硬化約52Aから大幅に硬くなった
  • 手で触っても弾力の違いが分かる
  • 後硬化後も表面や外観に大きな変化はなかった
  • 脱型した状態では厚みが約0.1mm増加した
  • カップに入れたまま後硬化すると脱型が非常に難しくなった
  • 後硬化後も引張りや曲げに対する強度は十分だった
  • 圧縮しても硬度は約70Aでほとんど変化しなかった
  • 1週間の圧縮後、一部の寸法は回復したものの約0.2mmの変形が残った

何より大きな収穫は、KE-1600が実際にカタログ通り後硬化によって約70Aまで硬くなることを確認できたことです。

一方、ステップダンパーとして考えると、個人的には後硬化状態は少し硬すぎるようにも感じました。

前硬化の約52A後硬化の約70A

どちらが実際のSR400に適しているのかは、まだ分かりません。

この辺りは最終的に実物のダンパーを製作し、純正品と比較してみる必要がありそうです。

次回予告|KE-1600の耐油・耐薬品性を検証

前硬化と後硬化による基本的な性質の違いが、少しずつ見えてきました。

しかし、バイク用のゴム部品として使用するなら、まだ確認しておきたいことがあります。

それが油類や薬品に対する耐久性です。

バイクでは、エンジンオイルやガソリン、ブレーキフルードなど、さまざまな液体に触れる可能性があります。

そこで次回は、KE-1600のテストピースを実際に各種液体へ浸漬し、

  • 膨潤するのか
  • 硬度は変化するのか
  • 寸法や重量は変化するのか
  • 表面が劣化しないか
  • ひび割れや軟化が発生しないか

などを調査してみたいと思います。

KE-1600は、果たしてバイク用ダンパーとして長期間使用できる材料なのでしょうか。

まだまだ実験は続きます。

第5回はこちら↓
現在準備中・・・

ABOUT ME
torishira
北海道在住。2021年にSR400 Final Editionを新車購入し、現在は自家塗装によるマットブラック仕様で楽しんでいます。実際に検証したメンテナンス・カスタム情報を中心に、「片手でスマホを見ながらメンテできるブログ」を目指して発信しています。